なぜ今、株なのか?
みなさん、こんにちは。
個人向けにオンラインで投資信託を販売しているフィデリティ証券が31日、株式の取引サービスへの参入を発表しました。2月4日から現物株やETFなどのネット販売を始める、とのことですが、土砂降りの大荒れ相場の中、なぜ今、株式なのでしょうか?次のデータを見ればその理由がよく分かります。
'98年のサービス開始以来、順調に投信の販売を伸ばしてきた同社ですが、国内の投信マーケット全体でみると、ネット経由での投信販売はまだ3%と僅かです。(下の円グラフ左)
一方、現物株については既に取引の多く(84%)の投資家がネット経由で売買を行っており、株はネットで買うものという認識が一般的になっています。(同右)
(データ出所:フィデリティ証券)
同社によれば、今回の株取引サービスへの参入は、この個人の利用度が高い「株のネット取引を突破口にして自社の認知度を高め、投信ビジネスの拡大につなげていく」(中島ギフォード社長)のが狙いで、株式の売買手数料で収益を稼ぐ既存のネット証券とは一線を画す戦略を描いているようです。つまり「投信を売るための株」という位置づけです。
このためターゲットとする層も、既存のネット証券が対象とするアクティブ・トレーダーではなく、長期投資による資産形成を志向する投資家を想定。それゆえ手数料も投信を資産形成のコアにしている投資家にメリットがある内容になっています。
手数料体系は2つの区分に分かれ、投信残高が1000万未満の顧客は1約定当たり1500円(固定)ですが、1000万円以上になると同500円(同)の優遇手数料が適用されます。
他のネット証券に比べるとやや割高ですが、約定代金が100万円前後になるあたりから同社の方が有利になるように設定されています。既存のネット証券の約定代金が平均60万-70万円ですから、この点からもライバルとは違った顧客、とりわけ比較的、お金持ちな層をターゲットにしているといえます。
また株式のネット取引サービス開始に伴い、3月にはサイトが全面リニューアルされます。31日の記者会見で一部が公開されましたが、オンラインショッピングの仕組みをふんだんに盛り込むことが目玉。Amazon.comなどにある関連検索機能もあり、例えば、中国株ファンドで検索すると、それとよく似たアジア株ファンドも一緒に表示されるなど、とても便利です。ネット取引に抵抗がある人でも気軽に入っていける工夫が凝らされ、こちらも今から楽しみです。
既に同社は1月から300人のモニターによる試験サービスを始めていますが、「1約定当たりの取引額はほぼ想定通りで、ファンドを解約して株取引する顧客はほとんどない」(中島社長)と、手ごたえを感じているようです。
株式相場の暴落や金融商品取引法の施行などで、投信販売はどこも苦戦を強いられていますが、フィデリティのユニークな試みの行方が注目されます。
2月 2, 2008 お金入門 | Permalink | トラックバック (0)