中国のお金持ちに「マイ農場」が流行中
日経マネー本誌の巻頭連載「マーケット先読みWorld」で
中国担当してくれている、
岡三証券上海駐在員事務所 塩川克史(シオカワ カツシ)さん。
塩川さんから「今、中国のお金持ちに『マイ農場』がはやっている」と聞きました。その理由は「”またか!”な事件」。塩川さんの特別中国レポートをブログのみで公開します。
『マイ農場・共同農場』が中国で流行中
またか!! 昨年のクリスマスの朝、中国のテレビニュースを見ていると国家質量監督検験検疫総局は、中国乳業最大手の蒙牛乳業が四川省眉山工場で生産した出荷前の牛乳から発がん性物質アフラトキシンM1が見つかったと報道している。案の定、取引が再開された12月28日の株価は23.95%も下落、29日も7.4%安となった。
時価総額は2日間で137億香港ドル(約1370億円)吹っ飛んだ計算になる。
またか!というのは2008年に牛乳にメラニンが混入し、牛乳からヨーグルト、お菓子に至るまで汚染が拡がるという大規模な事件となった。特に粉ミルクを飲んだ乳幼児が相次いで腎臓結石になり、政府は製品検査を強化した。成田空港の薬局には明治の粉ミルクが売っているが、買っていくのはもちろん中国人で中国の乳製品に強い不信感を持っている乳児の両親達である。
私の子供達は、日本のアサヒビールと伊藤忠の合弁会社が中国山東省で製造している牛乳を飲んでいて、この牛乳は完全閉鎖型の安全な牧場で一貫生産されている。ただし1リットル25人民元(約300円)する。一般の中国人には恐ろしく高い値段である。そこで中国では信用できない牛乳の代わりに豆乳が流行っており、豆乳製造機なる家電がヒットしている。
また富裕層の間ではマイ農場なるものも流行っている。田舎に自分専用の農場を確保し、農民にお金を支払い、完全無農薬で、農業用水にもこだわって安全な作物を作ってもらうのである。もちろん作った作物は農民にも食べてもらう。そうすれば農民も手抜きを行わないし、現金収入も得られるのでみんなハッピーということだ。また中所得者向けには同じようなシステムで共同農場を運営している企業もある。
不信感ばかりが高まる中国食品であるが中国の乳業メーカーも対策を進めている。上海の大手乳業メーカー光明乳業は、粉ミルクを中国国内で製造することをあきらめ、ニュージーランドの乳製品メーカーを買収し、ニュージーランドで安全な粉ミルクを製造し、中国国内で販売することで消費者の信頼を回復しようとしている。
日本は安価で安全な食べ物が手に入る。中国では自分の体はお金をかけて守らなくてはならない。中国で安全に生活するコストは非常に高い。
(岡三証券上海駐在員事務所 塩川克史)
中国の消費市場は信用できるものから信用できないものまでが混在している。
(写真は上海の商店街。本文とは関係ありません)